2018.6.26 加筆更新
ランナーの方に多いのが膝の痛み。
ベテランランナーも初心者ランナーも膝に悩まされて来院される方はとても多いです。
中でも膝の外側が痛む腸脛靭帯炎(ランナー膝)と膝の内側下側が痛む鵞足炎、この2つの故障が膝の故障の大部分を占めます。
今回は当院でも悩まれている方の多い鵞足炎について解説します。
鵞足炎の症状
鵞足炎は膝の内側の下が走っていると痛くなります。
最初のうちは違和感だけであったり、走り終わった後だけ痛かったり、
走るのを休めると痛みがなくなり、再開すると痛んだり…
最初から強い痛みが突然くる場合もあります。
かすかに腫れたり、熱を持つ場合もあります。
ひどい時は歩くのも辛く、じっとしていても痛くなります。
押さえたら痛く、痛い場所が広範囲の時も多いです。
膝全体が腫れることはありません。また、膝を曲げることも可能です。
膝全体が腫れると関節炎や他の疾患が考えられます。
膝の関節炎と症状がよく似ていて、同様に考えられる方も多いですが、関節の中とはまた別です。
原因も予防法も違うので迷ったら自己判断せずに早めに医療機関を受診してください。
鵞足炎と診断されたら
鵞足炎と診断されると「使い過ぎです。しばらく走ってはいけません」と言われる場合が大部分ですね。
そりゃそうだけど・・・
鵞足炎の場合、安静にするのは必須です。
きっちり安静期間を守ってください。
そのうえで、鵞足炎を起こす筋肉の構造と原因を正しく理解して対処しないと再発を繰り返したり、クセになります!
鵞足炎の本当の原因
①鵞足炎を起こす膝の構造
本来、ヒトの膝は長距離を走り続けると、膝の構造上、骨と筋がこすれ合わされやすい形をしています。
膝の内側には、縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はくきん)、半腱様筋(はんけんようきん)の3つ腱が集中しています。この3つの筋肉の腱が集まったところを鵞足といいます。
この鵞足部分に炎症が起こり痛みを感じるものが鵞足炎です。
膝を内側の横から見てみると、縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つの筋肉の腱は脛骨の膨らんだ盛り上がりの上にあります。
マラソンやランニングでは膝の曲げ伸ばしを何万回も繰り返します。
最初はごく微細なこすれ方であっても、繰り返しこすれると腱が少しずつ腫れます。
腫れると腱は太くなります。
太くなるとさらに骨とこすれます。
さらに腫れ、筋が太く硬くなり、少し休めたぐらいでは腫れがひかなくなります。
つまり鵞足炎はこじらせやすく、クセになりやすいです。
②太もも周りの安定のなさ
半腱様筋
太ももの後方には人体で最も力のある太い筋肉。ハムストリングスがあります。
このハムストリングスは大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋の3つから構成されています。
鵞足を形成している3つの筋肉の一つ、半腱様筋(写真の水色の筋肉)はハムストリングスの筋肉でもあります。
筋肉は力が強くなると硬くなりやすい性質があります。ランニング等で脚を使った後は特にこのハムストリングスをストレッチしておかないと硬くなります。
ハムストリングスの筋肉が硬くなると、その構成筋肉である半腱様筋も硬くなり、柔軟性がなくなります。
上の図を見てわかるように半腱様筋の鵞足付近の腱が硬く柔軟性がなくなると、カーブしている部分がピンと張ってしまい、骨の盛り上がりと常にこすれあうことになります。
薄筋
膝の内側から太ももの内側の筋肉、これは鵞足を形成する3つの筋肉のひとつで薄筋(緑色の筋肉)といいます。
薄筋は膝を内側に引き寄せて、足先を内側に向けさせます。
この筋肉は内股になったり、走るときにつま先が内側を向くと負担が大きくなる筋肉です。
走るフォームをよく観察してください。
つま先が内を向いていませんか?
シューズの踵の内側がすり減っていませんか?
普段、ランニング中はつま先が真っすぐでも、坂道を下るときつま先が内を向いていませんか?
坂道で下りの勢いを抑えようとすると、つま先を内に向けて走るはずです。
私は昨年、書写山の急な坂道を繰り返し走り続け、鵞足炎になり3週間走ることが出来ませんでした。
本当に痛いです!
とてもじゃないが走れません!
脚の筋力が充分でない、フォームが安定していない、ランニング経験が少ない場合は急な下り坂を走ることは薄筋に必要以上の負荷をかけて、鵞足炎の原因になります。
縫工筋
縫工筋(図の黄色の筋肉)は膝の内側から外側へ、太ももの前を斜めに通っている筋肉です。
あぐらをかくときに使う筋肉として知られていますが、この筋肉は大腰筋・腸骨筋・大腿筋膜張筋と一緒になって股関節を曲げたり、太ももを持ち上げる作用があります。
つまり、体幹を安定させる筋肉と協力して働いています。
鵞足を構成する縫工筋だけでなく体幹の筋肉やインナーマッスルが弱くなっていることが鵞足炎の原因にもなります。
走っているうちに徐々にフォームが崩れたり、腰が下がっていないかチェックをしましょう。
③その他の要因
股関節や足首の可動性が減少していると路面からの衝撃が吸収しきれず膝に負担をかけます。
シューズの選択、走る路面の固さも原因になる場合があります。
脚がⅩ脚だと太ももの骨は内側へねじれ、膝から下の骨は外側へねじれるようになります。二つの骨のねじれが強くなると、鵞足への牽引力が強くなり、痛みを誘発します。
鵞足炎を根本から治そうとするには
まず、この膝の痛みが本当に鵞足炎なのか別の疾患からのものなのかをしっかり鑑別する必要があります。
膝関節炎
内側側副靭帯損傷
内側半月板損傷
タナ障害
変形性膝関節症
など膝に痛みがある疾患との見極めが大切です。
しかし、Ⅹ線検査では変形性膝関節症のように骨の形が変化たものしか分かりません。
鑑別に大切なのは触診力です。
実際に痛む部分やその周囲を丁寧に触り、筋肉や腱の走行を手で触れて原因を探し出す知識です。
その上でこの鵞足炎がなぜ起きたかを患者様と一緒に考え、対策をしていかないと根本治療になりません。
鵞足炎のためのテーピングを紹介します。
橋本接骨院ではランニングでの鵞足炎は数週間走ることを禁止する場合もあります。しばらく安静にして施術を続けると痛みもなくなることもありますが、治っているわけではありません。
傷んだ組織が修復されるにはある程度の期間が必要です。痛みがなくなったからといってすぐに練習を再開すると、かえって悪化することがあります。
けっして自己判断をしないで安静期間を守るようにしてくださいね!
マラソン前のメンテナンス、走った後の疲労回復、ランニングでの痛みなどお気軽にご相談ください。
橋本接骨院はランナーの皆様を応援致します。
姫路市小性町290-3船場西ビル1階
℡ 079-298-2541
月~金 8:30~12:00 15:00~20:00
土 8:30~14:00
日・祝日休診
コメント